雨待ち

メタファーじゃないです

九年前


九年前の四月の終わり おじいちゃんは亡くなった

その年の春休み、私たちはおじいちゃんおばあちゃんと一緒に旅行に行った。

おじいちゃんは車椅子に乗っていて、昔からいつもフィルムの一眼レフを首から下げていた。

みんなで熊本城の桜を見て、屋台でチョコバナナを買った。ほかにもたくさん出掛けた。阿蘇山とか宇土とか。

空港に向かう前、家の前でおじいちゃんと姉と私であのカメラで写真を撮った。

そのときはおじいちゃんが死ぬなんて思ってもいなかったから写真が苦手だった私は上手くない笑顔で笑ってた。もっと楽しそうにしてれば良かったって何度も思った。


満開の桜をみんなで見れて、美味しいご飯をみんなで食べれて、おじいちゃんは幸せだったね ってみんな言う。私もそう思う。


まだ忘れられないのが、

車で菜の花畑を通り過ぎたとき。

おじいちゃんは 窓を開けてごらん、菜の花のいい香りがするよ って言ったけど私と姉は一番後ろの窓が開かない席に座ってて、窓開けられないよって誰かが言った。大したことではないけれど、そのときの残念そうな顔が忘れられなくてずっと憶えてる。


今日、おじいちゃんに会いたいと思った。

きっと今ならたくさん、いろんなことを話せる。おじいちゃんの好きな音楽を大きいスピーカーの前に座って一緒にききたかった。政治の話もただの昔話もたくさんたくさん今なら楽しく話せるのに。

さみしいなあ